世界有数のアルミプロファイルメーカーは、生産の国内回帰における確実な課題解決のため、 5台のYuMi®を活用しています。

世界有数のアルミプロファイルメーカーは、生産の国内回帰における確実な課題解決のため、 5台のYuMi®を活用しています。

日本の製造業における生産拠点の国内回帰において、働き手の確保、生産性の維持向上は、最も代表的な課題です。ロボットによる自動化は、今後もそれらの課題に対する最も現実的な解決策のひとつです。

一方、自社要件を満たす自動化設備開発への投資対効果に確信が持てず、導入に踏み切れないという声も聞こえます。ABBは、そうした不安をどのように解消し、お客さまの投資計画を成功に導いているのでしょうか?

Summary 

アプリケーション: 
アルミダイカスト部品の仮組みと組立専用機への投入    

課題: 
- 単調作業に対する人材確保の困難さ
- 作業者の熟練度による生産量の不安定さ
- 生産量の向上および安定化(目標生産量:100万個/月)

ソリューション:
- 実機試験とシミュレーションによる導入効果の事前検証の実施
- パーツフィーダとYuMiを組み合わせたセル型の自動化モジュールシステムの開発
- 2種のコネクタ部品製造に5機のモジュールシステムを導入、計5台のYuMiが稼働
- 月産100万個、11人分の作業を完全自動化、生産効率を20%向上、投資回収期間は約2年

アルミフレーム市場のトップランナー、SUS

SUS株式会社(以下、SUS社)は、日本の静岡県静岡市に本社を構える、世界有数のアルミプロファイルメーカーです。現在、23か所に日本拠点を構え、16カ国に海外拠点および代理店を展開し、アルミを原料とした各種加工品、工場の自動化向け機械装置、制御関連製品、建築用アルミ構造材の設計、開発、製造および販売を行っています。

SUS社はアルミフレーム市場において世界トップクラスのシェアを誇ります。ABBのロボットは、2022年10月よりその主力製品のひとつであるアルミパイプ構造材GF、その主要構成部品であるコネクタ部品の製造工程に導入されています。

アルミパイプ構造材GFは、2001年に販売開始されました。その特徴は、基本フレーム上の4方向のレール型突起をコネクタ部品で外側から掴んで締め付けるという方式を開発した点にあり、組み付けや位置調整が非常に容易な構造を実現しています。従来の組立式アルミフレームの扱いにくさを改善した同製品は、販売開始から20年以上を経て、40種を超えるフレームタイプ、1,000種を超える関連部品を有する製品シリーズへと成長しました。

GFの最も販売数の多い構成部品は、外寸28mmフレーム向け、アルミダイカスト製のコネクタ部品(マルチコネクタ)で、インナー型(外寸28mm x 長さ40mm、重さ44g)、アウター型(外寸33mm x 長さ43.5mm、重さ52g)の2種があります。フレームを挟み込む構造のため、いずれも分割された2つの部品をボルトで組み立てた状態を完成品として出荷されます。これら2種のマルチコネクタの月間生産量の合計は約80万個でした。
 

主力製品の生産拠点の国内回帰における課題とは?

SUS社は、世界各地へと販路を拡げる中でタイのランプーンにある工場でこうした部品類を製造してきましたが、2014年、需要変動や海外生産にかかるさまざまなリスクに対応しつつ、品質やリードタイムの改善および生産技術力の向上を図るため、マルチコネクタなどの主要部品の国内生産回帰を決断し、段階的に移管、自動化を進めてきました。

マルチコネクタ製造の最終工程では、組立専用機(以下、組立機)を使用し、ばら積みコンテナに入ったインナー型、アウター型それぞれの分割部品を組み合わせ、組立機に投入する作業があり、人手でこの作業を行う場合は1台の組立機あたり1人の作業者が必要です。一方、月間80万個の生産量に対しては11台の組立機が必要で、11人の作業者を安定的に確保する必要があります。

SUS社は、この組立機への投入工程の運用において、以下の3点で困難を感じていました。

- 働き手の採用、育成、定着
- 極めて単調な作業内容
- 作業熟練度による生産量のばらつき

これらの解決には、自動化が有効であることは明らかでした。一方、自動化の検討においては、以下の3点が課題として挙げられました。

- インナー型コネクタは、分割部品組み合わせ時の強度最大化のため、独特なスパイラル形状。
  そのため、組立機投入前の分割部品の組み合わせ時に微妙なひねり動作が必要。

- 組立機への投入装置をモジュールシステムとして開発、将来的に多品種に柔軟に対応させる。
- 精緻な作り込みを要するモジュール開発への投資判断には、導入効果の正確な試算が必要。
 

こうした課題を解決すべく、SUS社はABBに相談しました。検討の結果、双腕型協働ロボットであるYuMiに着目、導入のタイミングを見計らい、具体的な課題解決に着手することとなりました。

  • 現在、5台のYuMiモジュールが稼働中
  • 各モジュールはYuMiと背後のパーツフィーダで構成
  • YuMiはフィーダから供給されるパーツをピック、仮組みし、専用組立機へ投入
  • 安全柵を不要とする協働型はモジュール運用の柔軟性向上にも貢献
  • 当初は組立機11台に作業者11人を要したが、現在は組立機5台で生産効率を20%向上
  • スパイラル形状の仮組みにおけるひねり動作は、パス設定の自由度の高さも重要
  • 高速作業のためのエアチャックカスタムハンド、1サイクル5秒の人手作業を4.5秒に短縮
  • 運用の柔軟性向上のため、YuMiの最終調整はSUS社エンジニアにて実施する前提で支援
  • 箱詰め工程はABB IRB 360 FlexPickerで自動化

生産能力と実現性を事前検証し、投資判断を支援

基本的なモジュールの構成としては、YuMiの背後に2台のパーツフィーダを置き、左右両側から部品を供給、YuMiはそれらを各腕でピックして治具に置き、分割部品を組み合わせて組立機に投入する、という構想です。また、YuMiであればコンパクトな本体に対して2本のアームを設置でき、さらに安全柵を不要とすることで、モジュール運用の柔軟性向上にも貢献します。

まずはABBの実機検証施設であるアプリケーション・センター 東日本にて、YuMiの実機による簡易的な組み立て試験から着手しました。この施設には、数多くの実機検証を通じてYuMiを熟知したエキスパートが常駐し、ハンド提案なども含む解決のアイデアを日々提供しています。簡易的な作業環境や治具を作成してYuMiを調整し、片腕7軸の柔軟性を活かすことで捻りの必要な部品の組み合わせ作業についても、問題なく対応できることを確認できました。

また、RobotStudioを用いたシミュレーションでは、専用機やパーツフィーダのCADデータを仮想空間に取り込み、実際のシステムレイアウトを精密に再現しながら動作の最適化と生産能力の検証を行いました。結果として、YuMiの能力であれば目標生産量に対して十分に余裕のある生産量を確保できることがわかりました。なお、シミュレーション時にYuMiを設置する高さの違いによる動作状況も検証し、両腕動作に対して最も負荷が低く、能力を発揮しやすい高さを割り出しています。

このように仮想空間において緻密な作り込みや生産能力の確証を得るためには、負荷状態での挙動変化までをも含むロボット動作の再現性が不可欠です。実機ロボットと同様の演算で仮想ロボットを動作するRobotStudioのユニークな仮想ロボットコントローラ技術が、このような再現性を生み出しています。さらに、シミュレーション動画はお客さまの社内承認プロセスにも活用でき、検証時に作成したプログラムは、そのまま各モジュールのYuMi実機の基本プログラムとして使用できます。

  • RobotStudioに構成設備の実寸CADデータを取り込み、詳細な動作検証を実施、ロボット設置高さ、アーム動作のゆとり、治具配置などを最適化
  • インナー型コネクタ、独特のスパイラル形状で組み合わせ時の強度を最大化
  • ABBローカルアプリケーションセンターで実ワーク試験を実施し、組立作業の実現性や実機ベースの処理速度などを確認
  • 自動化前の人手作業の様子、単調作業から工程管理などのよりやりがいある業務へ
『YuMiの導入により、十分に収益を出せることは明らかでした。かつては作業者の熟練度によってばらつきがあった生産量も安定化でき、より精度の高い生産予測や調整が可能となりました』
設計開発担当取締役 長田 展幸 
 

システムとして十分な余力を持って予測した目標を達成

事前検証によって得られた投資対効果の試算に基づき、システム開発への投資を決定したSUS社は、従来の生産量を基準として、各1台のYuMiが組み込まれた5つの自動投入モジュールを導入しました。

『今回の自動化により、投入作業に従事していた11人の作業者を単調作業から解放でき、管理業務などよりやりがいを持ちやすい作業へと配置転換できました。少ない人数で夜間の稼働もできるようになり、組立機の稼働台数を11台から5台まで減らすことができました』
静岡製造グループ ダイカストチーム チームマネージャー 瀧 彰寛 氏

『1回の組立機への投入に要するタクトタイムを5秒から4.5秒に減らせました。また、同様に1台の組立機の8時間あたりの生産量は、5000セットから6000セットと生産性を20%向上でき、生産量変動にも柔軟に対応できるようになりました。今回の投資に対する回収期間は概ね2年を見込んでいます』
ECS設備チーム 河住 雅広 氏

なお、現在の生産設備において、YuMiは上限能力に対して概ね5-60%の能力と十分に余力のある設定にて生産目標を達成しており、生産調整にも容易に対応できます。また、長田氏は次のようにも述べています。『RobotStudio®で作成いただいたプログラムに基づき、当社のエンジニアが最終調整をしました。こうした使い勝手は、長期運用における修正や将来的な拡張においても重要でしょう』
 

この成功を横展開し、さらなる生産改善をめざす

YuMiの導入において、事前の想定に見合った投資対効果を得て製造工程の自動化に成功したSUS社。現在、別の品種へのモジュールシステムの追加や他工程における自動化も視野に入れています。「この成功を元に、当社にはたくさんの工場がありますので、横展開して色々な生産改善をしていこうと考えております」と、長田氏は述べます。SUS社は、持続的な事業成長を果たす上で、国内生産回帰の動きとともに、ロボット活用による生産改善を重要な取り組みとして位置づけています。
  

>> 協働ロボットに関するお問い合わせはこちら
   
   

SUS株式会社
www.sus.co.jp
SUS株式会社(本社:静岡県静岡市)は、世界有数のアルミプロファイルメーカーとして、1992 年の創業以来、30 年間一貫してアルミという素材に向き合い、その可能性を広げ、 自動車、半導体、食品加工から物流に至るまで、様々な業種の自動化・省力化を支えるアルミプロダクトの開発・提供に取り組んできました。 近年では、生産設備に使われるアルミフレームや部材など、個々の 製品提供にとどまらず、現場の電動化や IoT 化を簡単・低コストで実現する独自のコントローラなども含めたソリューションの提供を通じて、お客さまの課題解決を後押ししています。 SUS株式会社は、今後もアルミという汎用性の高い優れた素材を使用した部材提供はもちろんのこと、アルミ素材がもたらす様々な可能性を生かし、社会を変える新たな価値の創造と開発を進めていきます。

リンク

お問い合わせ先

ダウンロード

記事を共有する

Facebook LinkedIn X WhatsApp