Summary
アプリケーション:
- レーザーマーカの導入に伴う刻印作業の高精度化および自動化
- プレス機への投入・取出の自動化
課題:
- 自社生産工程の自動化機会の検討
- ロボット活用ノウハウの向上および自前化
- 社外に対するロボット自動化提案事業の拡大
自動車分野を中心にものづくり産業を支える長堀工業株式会社
長堀工業は、大阪市中央区に本社を持ち、長堀工業ブランドを冠した配管・迅速流体継手のクイックカップリング、ねじ締め工具のソケット、ビットなどを開発、製造、販売する専門メーカーです。1966年に長堀商会として大阪市西区にて創業し、1969年に工場部門を分離する形で長堀工業を設立しました。その後現在に至るまで、国内主要都市に営業所や子会社を展開、約130名の従業員を擁しています。また、主要国を含む海外の25カ国へも販路を拡げ、事業を拡大してきました。
長堀工業の主な取引先としては、高品質なねじ締結が必要とされる分野は広く、自動車、航空機、建機、農機、家電といった分野の主要メーカーが挙げられますが、特にインパクトソケット、ナットランナーソケット、ドライバーソケットなどの先端締結工具に多大なる信頼を確立しており、高精度な組立作業を要する殆どの自動車メーカーに採用実績を有し、生産を支えています。また、そうした技術的知見を生かし開発されたクイックカップリング(迅速流体継手)によって、より幅広い分野における需要を開拓しています。
長堀工業は現在、長年にわたる客先や自社の製造現場での経験を経て育んできたノウハウを生かし、顧客課題の解決を行う提案営業の取り組みを加速させています。例えば「このようなボルトでこの部分を締結するために最適な工具や工法を選定してもらいたい」と言ったご要望にお応えすることです。こうした製造現場の最前線においてお客さまのお困りごとを吸い上げ、解決策を提案する。このような同社の現場力をより広く生かすべく、現在ニーズの広がる協働ロボットを中心とする自動化提案に注力しています。
長堀工業は全国トップクラスのものづくり集積地である東大阪に根差している 高品質な標準品販売に加え、現場課題に密着した技術提案で絶大な信頼を確立 製造工程では熟練した作業者が高度なものづくりを支える 一方で最新の工作機械の導入など、製造工程の現代化にも積極的に取り組む 製品検査では入念な目視検査でワンオフ品にも対応、顧客からの信頼を支える
GoFaの速さ、滑らかで精緻な動きを実機で確認し、購入を即決
数多くロボットメーカーが市場にある中で、長堀工業はABBに注目しています。そして現在、ABBの協働ロボットGoFaを2台導入し、自社の製造工程において試験運用を行なっています。
『私たちは、常にいいものをお客さまに提案したい、そのような思いがあります。つまり付加価値によってお客さまにご指名いただける提案をしていかなければいけない、ということです』 長堀工業株式会社 営業統括本部長 岡本 裕之 氏
長堀工業は、主要な取引先である自動車部品メーカーや建機メーカーの現場においてABBロボットが活用されており、担当者からの評価の高さを耳にしていました。『具体的には、精度や速さなど、中〜大型の産業用ロボットの基本能力の高さ、とにかく“よいロボット”という評判でした』と、岡本氏は述べます。
GoFaの購入に先立ってABBのアプリケーション・センター 中日本を訪れた長堀工業の導入検討チームは、従来の協働ロボットの印象を払拭するGoFaの速さ、そして滑らかで精緻な動きを実機デモによって確認し、購入を即決しました。
『GoFaの動きを実際に目の当たりにし、評判通りの動きの良さだな、と思いました。それに加えて、現在では使い勝手の良さ、そして速さを生かすための安全システムの活用について着目しています』 長堀工業株式会社 常務取締役 森 孝允 氏
ドライバービットへのレーザーマーカの導入に伴う刻印作業の高精度化および自動化 ソケット部品製造におけるプレス機への投入・取出の自動化 GoFaの作業精度を活かし刻印のレーザー化を実現 レーザーマーキングで情報を高密化 GoFaによるプレス機への投入、クイックな動作で生産性を向上 従来の人手作業は単調な反復動作、安全作業への習熟も必要
自前による初めての協働ロボット導入へのチャレンジ
長堀工業でも、自社の製造ラインにおいて産業用ロボットを活用しているものの、自社でロボットのプログラミングを行い、システムへの導入を行うのはほぼ初めての経験とのことでした。
『最初は右から左に、といったとにかく単純な動作からスタートし、例えばセンサーを追加するなど、一つずつ条件を加えながら試行錯誤を繰り返し、最終的に現在のシステムまでプログラムを仕上げていく過程でGoFaの基本的な操作を習得していきました』 長堀工業株式会社 第二製造課 課長代理 三浦 誠 氏
三浦氏は、NC旋盤などの扱いには慣れていましたが、ロボットに関しては全くの初心者だったとのこと。GoFaの操作習得の初期段階、その後、安全システムの活用を進める段階でABBの施設にて講習を受け、その後はリモートサポートなどを適宜活用しながらロボットのシステム導入を進めました。
『ペンダントやRobotStudioの使い勝手の良さにも助けられています。表示もしっかり日本語化されており、ある程度理解を進めることでかなり直感的にロボットを動かせるようになりました。また、プログラム言語の特性としてロボットの命令文やパラメータ処理などで解決できることも多く、応用が効きます』と、三浦氏。
GoFaの自己位置と作業者の潜在リスクを勘案し、SafeMoveと呼ぶ安全システムを用い、GoFaの速さやトルク制限を設定 複数の安全機器を構成可能で、ここではレーザースキャナで作業者の距離を検知 RobotStudioで複数の安全領域を直感的かつ正確に設定でき、各領域における制御条件を入力するといった形で全体の安全設定を構築 設定内容の確認は、RobotStudioの拡張現実機能を活用でき、実機のコントローラとPCを接続することで実機動作と画面描画を同期し、各安全領域への侵入状況や安全機器の干渉状況、ロボット制御状態の確認などを視覚的に実施可能 プレス機側も同様にSafeMove安全条件を設定、生産性と安全性を両立
協働ロボットの付加価値を高める“安全性と生産性の両立”
現在、GoFaはドライバービット製品のレーザー刻印作業、およびソケット部品材料のプレス機へのロード&アンロードの2種類の工程で運用されています。いずれの工程においても、ワークの供給および回収は人手が介入します。そのため、ABBのユニークな安全システムであるSafeMoveを活用しています。
『GoFaは確かに動きが速いですが、お客さまへの提案としては、安全性にもしっかりと配慮する必要があります。また、プレス機のような危険性の高い周辺装置との組み合わせですので、よりシビアなリスク管理が必要です。こうした条件の下、安全性と生産性の両立について現在、試験を進めています』と、森氏は述べます。
SafeMoveの機能を活かし、アセスメントに基づいてロボットの軸位置や侵入領域、安全センサによる作業者の有無といった条件を組み合わせ、生産性と安全性を両立する考え方をABBではDynamic Safetyと呼んでいます。
『単純に速いロボットというだけでなく、安全システムを組み合わせることで生産性と安全性を両立する技術があるという点は、GoFaをお客さまにご提案する上で非常に大きなバリューであり、私たちの提案を一味違うものにしてくれます。また、今後そうしたニーズは高まっていくと考えています。ぜひ、私どもの設備を実際にご覧いただき、GoFaの動きのよさやユニークな安全システムのメリットをご体験いただければと思います』と、岡本氏。
まずはショーケースとして自社の製造工程に2台のGoFaを導入した長堀工業は、自社の手による自動化によって導入費用を抑えながら、夜間の設備稼働などにより自動化の実益も享受することに成功しました。こうした実践的なノウハウを活かしながら、お客さまの製造現場の最前線において、より多くの“お困りごと解決”のため、長堀工業は引き続き尽力していきます。
長堀工業株式会社
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