- ABBの協働ロボットYuMi® を使用した、ショウジョウバエの移動を麻酔なしで自動化する世界初のソリューション
- 研究者の作業時間を20%を節約し、アルツハイマー症のような神経疾患の研究や治療における重要な業務に集中することが可能
ABB ロボティクスと米国最大の小児病院のひとつであるTexas Children’s HospitalのDan Duncan Neurological Research Institute (Duncan NRI)は、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病などの研究を支援するため、ABBの協働ロボットYuMi®を搭載したショウジョウバエ(果実バエ)の自動移送ワークステーションを開発し、画期的な医療の進歩を実現しました。
これは従来の自動化ソリューションにおいて面倒な工程であった、移動前に二酸化炭素などの麻酔薬でハエを動けなくする必要のない初めての自動化ソリューションです。この工程はハエの行動に悪影響を及ぼし、ひいては研究結果の正確性を損なう可能性がありました。
ABBのYuMiは人間の研究者と同じ動作でハエを刺激し、バイアルから別のバイアルへ移します。これにより、研究者は新しい神経経路の特定や神経疾患の治療に有効な新薬のテストなど、より重要度の高い作業に集中することができます。また、ハエを移動させる前に麻酔をかける必要がなくなるため、実験結果の精度が向上すると同時に移し替え作業が高速化されます。
ABB サービスロボティクスプロダクトラインのマネージャー Jose-Manuel Colladosは次のように述べています。「長年にわたりラボの自動化は大幅に進歩してきましたが、結果に影響を与える可能性がある重要な作業は依然として手作業で行われています。当社のYuMiのアームは独立して動作しながらも互いに連携して動作するため、生きたハエをバイアルからバイアルへ移動させるという複雑な作業の自動化が可能になります」
ショウジョウバエ(学名:Drosophila melanogaster)は通称「果実バエ」と呼ばれ、遺伝学、発生生物学、行動学など生物学のさまざまな分野の研究で広く用いられています。 ショウジョウバエは、人間と多くの遺伝学的および発生生物学的特徴を共有しており、世界中で人間の神経疾患の研究に用いられています。
日常的なメンテナンスの一環として、研究者は30日ごとにショウジョウバエを新鮮な餌が入ったバイアルへ移して餌を与えます。一般的な研究室では2万本ほどのバイアルを管理しており、研究者は1日のうち約20%の時間を費やして「ハエをひっくり返す」作業を行っています。これはハエのストックが入ったバイアルを新しい餌の入ったバイアルの上に置き、軽くたたいてハエを落とすという作業です。これまでのところ、このプロセスを自動化しようとする試みはすべて移し替えの際にハエをバイアルの外に出す必要があったため、鎮静剤の投与が必要でした。
ABB ロボティクスのエンジニアはDuncan NRI の研究者と協力し、YuMi、移送用にバイアルが並べられたテーブル、バーコードおよびラベル貼付ユニット、ダストシュートを備えたハエの自動搬送ワークステーションを設計・構築しました。
「生物医学研究を加速させるこの画期的なソリューションは、ABB ロボティクス社との2年以上にわたる密接なパートナーシップの成果です」と、ベイラー医科大学の分子・ヒト遺伝学部門および分子・細胞生物学部門の教授であり、Duncan NRIの主任研究員であるJuan Botas博士は述べています。「私とベイラー医科大学の准教授でDuncan NRIの研究員でもあるIsmael-Al Ramahi博士が主導する、DNRI研究者のショウジョウバエ生物学とハイスループットの専門知識を、ABBエンジニアの自動化に関する専門知識と組み合わせることで、時間を短縮し、ロスを排除し、より多くの実験を並行して実施できる協働ロボットベースのソリューションを設計することができました」
YuMiは、事前にプログラムされた10のステップを素早く連続して実行するなど、ショウジョウバエを反転させる作業の全工程を担当します。人間と同じように、YuMiは生きたハエの入ったバイアルを取り上げ、保護用のセルロースアセテートキャップを開け、新鮮な餌の入ったバイアルに重ね、バイアルを軽くたたいてハエを移し、キャップを閉め、ラベルを貼り、スキャンし、最後にバイアルを段ボールのラックに積み重ねます。 ロボットは、交差汚染を避けるために古い餌の入ったバイアルを廃棄します。
このソリューションに組み込まれた重要な技術的特徴はバーコードの読み取りとラベルの印刷機能であり、これらは移動中にバイアルに系統と遺伝子型の情報を付与するために使用されます。この機能により、ショウジョウバエの系統の正確な追跡と管理が可能になります。ロボットの先進的なセンシング技術によって、一般的な段ボール製ラックにバイアルを正確に配置することが可能となり、既存のバイアルラックを引き続き使用することができるため、運用コストを削減することができます。
さらに重要なのは、ロボットは人間との共同作業に適した設計がされており、安全であるということです。 モーションセンサー付きアームは近くにいる人間や物体を感知し、事故を未然に防ぐために即座に動きを停止します。これにより、安全な共同作業スペースを実現します。
プロジェクトの詳細については、当社のウェブページをご覧ください。
ABBロボティクス&ディスクリート・オートメーションは、世界有数のロボティクスおよびマシンオートメーションサプライヤとして、価値創造型ソフトウェアによって設計、構築されたロボット、AMR、マシンオートメーションソリューションを網羅した包括的かつ統合的なポートフォリオを有する唯一の企業です。私たちは、自動車からエレクトロニクス、ロジスティクスまで、あらゆる規模、あらゆる分野の企業が、より弾力的で柔軟、かつ効率的になるための支援を行っています。ABBロボティクス&ディスクリート・オートメーションは、未来のコネクテッド&コラボレーティブな工場への移行を目指すお客さまをサポートします。このビジネスエリアでは、約53カ国、100以上の拠点で約11,000人の従業員が働いています。go.abb/robotics
Texas Children’s
Texas Children’sは非営利医療組織であり、患者ケア、教育、研究の分野をリードすることで、世界中の子供と女性の健康な未来の創造に貢献しています。テキサス州で最高の小児病院として、また全米でもトップクラスの病院として常に高い評価を得ているTexas Children’s Hospitalは、小児医療と女性医療における専門知識と画期的な治療で広く知られています。その組織には、Texas Children’s Duncan NRI、小児研究のためのFeigin Tower、ハイリスク出産に重点を置いた総合的な産科/婦人科施設であるTexas Children’s Pavilion for Women,、ヒューストン西部郊外の地域病院であるTexas Children’s Hospital West Campus、ヒューストン北部の地域社会を対象とした初の小児医療専門病院であるTexas Children’s Hospital The Woodlandsが含まれます。また、Texas Children’s Health Planという米国初の小児向けHMO(医療保険組織)や、国内最大の小児プライマリケアネットワークであるTexas Children’s Pediatrics、小児専門の時間外診療を行うテキサスTexas Children’s Urgent Care clinics、そして世界中の子供や女性を対象としたグローバルヘルスプログラムも設立しました。Texas Children’s Hospitalはベイラー医科大学と提携しています。詳細については、www.texaschildrens.orgをご覧ください。
Duncan NRI
Duncan NRIは、著名な神経遺伝学者であるHuda Zoghbi博士によって2010年に設立されました。この研究所はベイラー医科大学とテキサス小児病院に所属する300人以上の医師と科学者からなる様々な専門家のグループで構成されており、子供と大人の両方に影響を及ぼす極めて複雑で破壊的な神経発達、神経変性、神経精神に関する疾患の研究を加速し、標的療法の開発に取り組んでいます。詳細は、https://www.texaschildrens.org/duncan-nriをご覧ください。