「未来の工場」の主要な特徴の1つは、タスク中心の工場環境から、より柔軟な労働者中心の環境への移行です。このシナリオにおいて、将来のスマートファクトリー構築のパイオニアであるABBは、自社の最も古いロボット工場をより協調性の高い職場に変革し、自動化を強化し、大型ロボットを製造する従業員にとってより安全な環境を生み出しました。
ABBは、スウェーデンのヴェステロース、中国の上海、米国のオーバーンヒルズの3工場でロボットを製造しています。ヴェステロースにある施設は1974年に開設され、ABB初のロボット工場でした。ここでは、電気・電子部品の組み立てに使われる小型ロボットから、車のシャーシを一度に持ち上げるのに十分な大型ロボットまで、幅広く生産しています。ABBは現在、約20種類のロボットモデルを提供し、90以上のバリエーションが様々な製造業において使用されています。1974年以来、ABBは世界中に40万台以上のロボットを出荷してきました。
ロボット、ロボットシステムの頭脳である市場をリードするコントローラ、トラックモーション製品やポジショナの製造だけでなく、ヴェステロース工場は、現在、ロボットの研究と革新のための温床となっています。
2017年、ABBは、増加するロボット需要に対応し、最新の協働ロボット技術を使用して、生産ラインの生産性と柔軟性を向上させることを決定しました。SafeMoveおよび安全スキャナを搭載した4台のIRB 6700と2台のIRB 8700ロボットを生産ラインに設置しました。
「我々は、お客さまの需要を満たすために能力と柔軟性を増強する必要があり、同時に、従業員の安全と人間工学を改善したいと考えていました」とABBヴェステロース工場の生産業務マネージャー、Claes Bengtssonは述べました。
「変革の最大の要素は、人とロボットが緊密に連携する生産プロセスを導入することでした」
ヴェステロース工場でABBは、市場をリードする2つのロボットソフトウェア技術でロボットを強化し、安全性と効率性を向上させています。
SafeMoveによる出荷能力の向上
この工場の変革では、ロボットにセンサとABBの安全ソフトウェアSafeMoveを搭載し、産業用ロボットを協調させ、追加の安全対策や安全柵なしで人間と産業用ロボットの安全な作業環境を実現しました。ABBのSafeMoveソフトウェアは、人間が近づいたときのロボットの速度、動き、および位置を制限する構成可能な電子的動作検出および防止対策によって、産業用ロボットを、人間と一緒に安全に動作する協働ロボットに変換します。
生産ラインには、フロアと天井の両方に多数のセンサが設置されているほか、ロボットとの共同作業中に人間を保護する各ロボットセルにライトカーテンが設置されています。この設備はまた、従来の大型ロボットが必要とするのと同じレベルの物理的障壁(例えば、ゲートおよびフェンス)を必要としないので、非常にコスト効率も高くなります。
「人間とロボットをオープン空間で協働させることは、我々が望んだ柔軟性を生み出す最善の方法でした。このセルのオープンフロアプランは、人間、ロボット、無人トラック間の作業分配を変更することができるので、生産量と扱うロボットアームのタイプの両方において、セルを非常に柔軟にします」と、ABBサプライユニットスウェーデンの生産マネージャー、Maria Malmportは述べました。
ABBでの仕事をよりやりがいのあるものへ
SafeMoveの設置により、オペレータは重量物を扱ったり、危険な動作を行ったりする必要がなくなるため、工場での人間工学も大幅に改善します。ABBのロボットは、このような作業を簡単かつ効率的に行うことができるだけでなく、疲れることなく繰り返し行うことができます。
時間と費用の節約を実現するRobotStudio
2018年、ABBは、ヴェステロース工場のすべてのロボットにコンピュータベースのツールボックスプログラミングソフトウェアであるRobotStudioを搭載しました。オフライン仮想コミッショニングソフトウェアは、物理的アセットやシステムの完全なデジタル複製または「デジタルツイン」を提供し、ユーザが生産ラインの内部動作を理解することを可能にします。ユーザは、実際の生産ラインに影響を与えることなく、仮想3D環境において完全なロボット設備の作成、シミュレート、テストをすることができます。RobotStudioは、製造の複雑化が進むなかで、企業が実稼働中に想定外の問題を起こさず新しいロボット、製品ライン、生産工程を迅速にテストすることを支援しています。これは、製造プロセスを簡素化するだけでなく、市場投入までの時間を短縮します。
ヴェステロース工場の改造は、物理的な実装の前にRobotStudioで完全に開発されました。これにより、損害をもたらすような現実的なミスを回避することで費用を節約でき、ABBは短時間で改修を完了できました。