チャレンジ：
病院は、薬剤部での業務を簡素化すると同時に、入院病棟での調剤プロセスの安全性を高めるソリューションを必要としていました。
ソリューション：
3Dビンピッキング自動化システムと同期したRobot Mini Load（RML）を備えたロボット調剤自動化システムが処方箋に基づき薬剤を格納、取り出し、ピックアップ、仕分けを行います。エラーを起こす可能性がある人間とは異なり、自動システムはより正確であるため、より優れた安全な調剤方法を構築します。
アプリケーション：
医薬品を取り出し、配置するためのRMLおよびビンピッキングイントラロジスティクスオペレーション。補完的な機能には、3Dビジョンシステムと機械学習が含まれ、ロボットのパフォーマンスを時間の経過と共に向上させるのに役立ちます。
病院の最も多忙な部門の1つとして、薬剤部は長年にわたり、その業務を合理化するためにテクノロジーに依存してきました。電子タブレットカウンタから完全にコンピューター化されたストッキングおよびラベリングソリューションに至るまで、テクノロジーは世界中の薬剤部に変革をもたらしました。それでも、調剤の効率を重視する要因は日々増加しています。人件費の増加と人手不足、高齢者人口の増化、医療過誤を減少させる緊急の必要性はすべて、医療業界におけるさらなる革新と柔軟性を求めています。
それこそ上海第七人民医院が実現しようとしたことです。2019年、伝統的な中国医学と西洋医学による包括的な医療を提供するこの病院は、病院、研究所、薬剤部におけるロボットおよびオートメーションシステムの利用を研究するためにABBと協力しました。1年も経たないうちに、病院には2台のロボットが導入され、人間よりも正確に薬を調剤しています。
薬剤部での自動化
病院の入院病棟の小さなガラスの部屋で、2台のABBロボットが連携して、円形棚から薬剤を取り出し、患者に配薬する準備をしています。自動調剤機能は、ABB IRB 2600ロボットと、16㎡をわずかに超える大きさの部屋で高速に動作するように設計されたIRB 1200小型ロボットを備えたビンピッキングシステムを使用したRMLシステムの同期動作によって実現されます。
RMLは、薬剤ボックスを特定して配置するのに約10秒を要し、毎時最大360キットを処理することができる一方、2番目のロボットシステムは、同時に約720個の薬剤を取り出せます。どちらのロボットも1回のミスや休憩なしに昼夜を問わず作業できます。
「これは、すべての入院患者にサービスを提供するための新しい「スマート」手法です」と、病院薬剤部の副部長であるShi Rongrong氏は述べました。
医療スタッフは、自動ロボット調剤セットアップに接続された情報システムに処方箋を読み込ませます。処方箋が画面上で点滅すると、IRB 2600は、最短経路で必要な薬剤ボックスを迅速に見つけて取り出し、同僚のロボット薬剤師であるIRB 1200に渡します。3Dビジョンを搭載したIRB 1200は、処方箋に基づいて薬剤をボックスから取り出し、セットアップの反対側にあるバスケットに入れます。コンベヤによりバスケットが人間の薬剤師に配送され、薬剤師は、投薬する前に内容物の最終チェックを行います。
IRB 1200の3Dビジョン技術により、薬剤の形状に応じてグリッパを自動的に切り替えることができます。ロボットは、2種類の真空グリッパを使用します。1つは薬剤箱を拾い上げるために、もう1つはより繊細なガラスの薬瓶を取り扱うためです。ロボットには機械学習機能も備わっており、時間の経過とともにその選択とピッキングタスクの精度が向上します。正しい薬剤が取り出され、配置されると、IRB 2600は、薬剤ボックスをその指定された棚に戻します。2台のロボットは、全ての必要な薬剤がバスケット内に配置されたときにのみ一時停止します。
自動化の利点
資格のある薬剤師だけが調剤することを要求する中国の規制は、薬剤部で働くことができる訓練された専門家の不足を招きました。これは、在庫登録のような反復的で退屈な作業への関心の欠如と相まって、手動による薬剤部の運営コストを高くしていました。ABBの分析によると、反復的な作業は、ロボットが1日24時間働くことができるという付加的な利点を加味して、現在の手動プロセスと比較して、自動化によって最大50パーセント速く完了できることが示されています。処方箋の記入に時間を費やす代わりに、人間の労働者は人間の判断を必要とするよりやりがいのあるタスクを実行できます。
また、調剤ロボットは、手動操作中に避けられない許容誤差を大幅に減少できます。3Dビジョンカメラシステムを介して保存された画像は、システムによって処理された全ての薬剤の100%のトレーサビリティを提供し、それによって、調剤プロセス全体の安全性を高めます。
最終的にはこのシステムにより、病院はリアルタイムの薬剤在庫管理を行うことができます。ロボットが薬剤の不足を検出すると、システムは必要な薬剤の再供給を自動的に促し、薬剤を患者に迅速に届けることができます。
「ロボット調剤自動化システムは、医療分野におけるパラダイムシフトであり、人間が自動化によってサポートされ、よりシームレスかつ効果的に患者にクリティカルケアを提供できる未来の病院を真に示しています」とABBのコンシューマーセグメント&サービスロボティクスのマネージングディレクターであるマーク・セグラは述べました。
将来に向けた柔軟性
ロボット調剤のコンパクトな設計およびモジュール式の特質により、セットアップは必要に応じて第7人民医院内を移動させることができます。効率的な診察、治療、および医療サービスを患者に提供するために、上海第7人民医院は、ABBの最新の自動化、デジタルおよびスマートテクノロジーを利用して、医療セクターを効率的で効果的な産業に変革しています。
副社長であるGao Xiaoyan氏は、次のように付け加えました。「現在、薬剤部で自動調剤を実現しており、今後は入院病棟に薬剤を届けるためにロボットを使用し、薬剤業務ループを完成させる予定です。さらに、病院のPIVAS（静脈内注射薬調合サービス)では、医療スタッフは、人体に有害な化学療法薬を調剤しなければなりません。また、調合後短期間しか効果がない薬剤もあります。これらのタスクをロボットで代行することでスタッフの保護、PIVASの時間対効果および安全性の向上を図ってまいります」
