2018年にABBと締結したサービス契約の一環として、日本の化学大手であるデンカが運営するシンガポールの3工場に、ABB Ability™スマートセンサが設置されています。サービス契約では、ABBが機器の故障リスクを管理し、信頼性の指標と緊急度を用いて予防保全や修理を実施または助言します。モータに不具合が発生した場合、ABBの工場で修理します。修理が不可能な場合、ABBはモータを交換します。
シンガポールのジュロン島で、デンカは世界最大級のスチレン系樹脂の生産を行っています。ここでは0.75kWから160kWまでの数百台のモータが、ポンプ、コンプレッサ、ブロワー、ペレタイザーを動かしています。ABBは、数百個のスマートセンサを使用して、プロセスに重要なモータ、ポンプ、ベアリングの運転と健全性のパラメータを継続的に監視し、24時間365日生産を継続できるよう、サポートしています。
このセンサにより、マニュアルの測定やデータ収集に費やす時間が短縮されるとともに、設備の運転性能に関する新たな知見がもたらされました。従来は、3カ月間隔でマニュアル点検を行っていました。そのため、潜在的なリスクを示す傾向を見逃し、重大故障や長時間のダウンタイム、生産損失が発生する可能性がありました。
スマートセンサは、稼動後わずか数日でフィードローラーのモータに通常より大きな振動を検出し、その価値を証明しました。モータを監視していたABBのエンジニアは、デンカのメンテナンスチームに警告を伝えました。点検の結果、粘着性のポリマーが大量に蓄積していることがわかり、モータにダメージを与える前に清掃することができました。
また、ファンカバーに張り付いた吸着パッドがモータの冷却を阻害し、異常な温度上昇を感知した例もあります。
同様に、ベアリングのパフォーマンスに異常が発生したこともありました。これは再調整を行い、警告(アラート)範囲内でわずかに上昇する程度に状態が改善されましたが、その後も注意深く監視を続けました。2ヵ月後、このベアリングは連続してアラームゾーンを越えるようになり、問題が発生する前に次の定期メンテナンス時に交換されました。
サービス契約の一環として、デンカはABBの防爆エリア用スマートセンサも採用しています。この新しい高性能センサは、ATEX、IECEx、NEC 500の認証を取得しており、バッテリー寿命が長く、堅牢なシールド設計が特徴です。また、IP66/67に準拠し、高いレベルの振動、腐食、物理的な衝撃に耐えることができます。
デンカは、カーボンブラックの生産拠点であるメルバウ工場において、防爆エリアのベアリングとモータにセンサを設置することを承認しました。溶融シリカフィラーを生産するトアス工場では、モータ、ベアリング、ポンプ用のセンサを設置し、モータはABBのサービス契約により完全にカバーされています。
デンカシンガポールのプラントメンテナンスマネージャーであるH.C.Ng氏は、「当社のプロセスにおいて重要なモータの多くは、早期に故障につながる過酷な運転条件にさらされ、ダウンタイムのコスト高を招いています。デンカはIoTを早くから採用しており、従業員がほとんど関与せずに重要なモータやベアリングの状態を監視できる、プラグアンドプレイのソリューションを求めていました。
スマートセンサは、当社のモータの寿命を延ばし、エネルギーを節約し、メンテナンスコストを削減することが証明されています。また、サービス契約のサポートにより、メンテナンスエンジニアは他の重要な業務に集中することができます。このプロジェクトは、デンカとABBの両者にとって圧倒的な成功を収めています。」と述べています。