ロボットが、重い自動車部品の負担から作業者を解放する

生産量の増加を視野に入れながら、重量物の持ち上げ作業や難しい点検作業から作業員を解放すべく、日本の自動車部品製造会社であるジーテクト社はABBのロボットを採用しました。その結果、品質を維持しながら生産能力を向上し、より創造的な業務のために作業者を解放する自動化システムを完成しました。

概要   

アプリケーション
自動車部品の基礎となる鋼板ブランク材を検査し、パレットに積み重ねます。鋼板ブランク材は、人間である作業者が安全に持ち上げるには重いものでした。

チャレンジ
品質検査基準を維持し、生産性を向上させながら、非常に限られたスペースに収まる自動化システムが必要とされました。

ソリューション
6kg可搬、1600mmリーチを有する3台のABB IRB 360 FlexPickerを、ABBのPickMaster3ソフトウェアによって制御しました。複数のロボットを制御すべく設計されているため、このシステムは使用可能なスペースを最大限に活用し、生産性を10%向上させることができました。

日本の自動車部品メーカーは、鋼板ブランク材の検査、ハンドリングをABBロボットを活用し、自動化することで、作業者の負担を取り除きながら生産性を約10%向上させています。

株式会社ジーテクト(以下、ジーテクト社)は、世界12カ国に拠点を展開し、自動車車体およびトランスミッション部品の製造を担う日本有数の専門メーカーです。栃木工場は、ジーテクト社の主要なトランスミッション部品の製造工場の一つです。

生産工程では、鋼板からトランスミッション部品のブランク材を500トンプレス機で打ち抜く工程があります。1シフト当たり2人の作業者が、各ブランク材の引っ掻き傷、へこみ、および他の細かな欠陥を目視によって検査を行なっていました。42種類のブランク材は最大2.3kgあり、一部は300mmを超える長さでした。また、各作業者は毎分約40枚の割合でパレットに積み込む必要がありました。  

つまりこの作業は、目視による厳しい検査と、重いブランク材を手で持って運び積み重ねる、という、作業者にとって非常に負荷の高いものでした。そこでジーテクト社は、品質と生産力を強化しながら、作業者をより負荷が低く、より創造的なタスクに移行させることができる自動化の導入を望んでいました。

自動化システムの導入に際してはいくつかの要件が特定されました。例えば、プレス機周囲の限られたスペースへの適合、生産量を向上できる能力、多種多様な製品を取り扱う必要性などが挙げられます。 そこで、システムインテグレータである株式会社MES甲信(以下、MES甲信社)に、システム導入のリードを依頼しました。同社は、提案された自動化ソリューションのニーズと課題を評価しましたが、それにはプレス機周辺において自動化システム全体に対する設置スペースが限られており、それに伴いスペース制約によって設置可能なロボット台数が限られている点などが含まれていました。

  • システム全景
  • 3台のFlexPickerを連携
  • ブランク材は40種以上
  • 外観検査にはAIを導入
  • FlexPickerのロングリーチを最大限に活用
  • MES甲信社の多品種対応ハンド
  • 制御と運用を司るPickMaster3

限られたロボット台数によって自動化の要件を満たすためには、各ロボットのリーチ範囲は約1200mm必要になります。また、このシステムでは重量について0.4~2.3kg、板厚について2~6mm、サイズについて120~330mといった範囲で40種類以上もの異なる品種のハンドリングに対応する必要がありました。 加えて、ジーテクト社は毎分40枚から毎分50枚へと生産量を増加させることも望んでいました。 

ソリューションに対する事前検証
MES甲信社は、ABBと協働し、異なる数のロボットによるいくつかの構成パターンを検証しました。ABBのFlexPickerだけが、システムのコンセプトである可搬重量5kg以上、実稼働範囲1200mm以上を満たすことのできる選択肢でした。MES甲信社は、最終的に可搬重量6kgおよびリーチ1600mmを有するABB IRB 360 FlexPickerを3台採用しました。

なお、このシステムではABB PickMaster 3というピッキングアプリケーション向けソフトウェアが使用されています。複数ロボットの連携制御を前提として設計されたPickMaster 3は、システム内の3台のロボットの能力を最大限に引き出し、必要な台数を最小限に抑え、省スペース化に貢献しています。そして、設計されたシステムが実行可能であることを確認するため、MES 甲信社はABBのRobotStudio Picking PowerPacシミュレーションソフトウェアを用いました。

「ジーテクト社とMES 甲信社はFlexPickerのユニークな特性とラインアップに着目していました。PickMaster 3と併せ、ABBロボットの能力を最大限に発揮できるシステムを作ることができました。ジーテクト社とMES 甲信社のご尽力に改めて感謝を申し上げます」とABB株式会社 代表取締役 兼 ロボティクス&ディスクリート・オートメーション事業本部 事業本部長である中島秀一郎は述べています。

「今回のプロジェクトにおいては、MES甲信社とともに、ロボット台数や設備の設置における課題や制約にどう対応するか、といった打ち合わせを繰り返し、最終的な仕様を煮詰めていきました。スペースとスピードが非常に重要な課題でした」と、プロジェクトの責任者である株式会社ジーテクト 生産本部 栃木工場 工場長である加藤明男氏は語ります。


本件の自動化プロセスは、外観検査工程とパレット積載工程という2つのセクションに分けられます。外観検査工程においては、AIベースの装置を使用し、作業者の技能水準および身体的な状態に左右されることなく、人間の目で達成可能な水準にできる限り近づいた解像度を備えています。

より大きな生産ボリュームへ
株式会社MES 甲信 取締役 営業部長 製造部長である小澤祥明氏は「RobotStudioとPicking PowerPackを使って、何度もシミュレーションを実施し、システムの実現性を確認、最終的には現場での動作の仕上げにより期待以上の生産量を実現できました」と述べています。

「42種類という多品種への対応については、バキュームカップを17個並べて、それらのひとつひとつを切り替えるような機構とすることで、単一のハンドで対応できるようにいたしました。さらに本システムでは、パレットを回収交換するタイミングにおいて人が介在している最中でも、ロボットのトラッキングを止めない、という設定にまでたどり着くことができました」(小澤氏)

自動化プロジェクトの効果について、加藤氏は「まず、2シフト4名分の作業を自動化でき、これらの従業員をより創造的な業務へとシフトすることができました」と述べています。「その上、およそ10%程度、生産性が向上し、1日あたりでは大体1万9200枚ほど多く生産できるようになりました。運用する側としては、やはり設備が止まらないこと、故障しないこと、メンテナンスがいいことが重要と思いますが、どれも非常に高いレベルで達成していただいています」(加藤氏)

小澤氏は将来を見据え、「ロボットと一緒になって人の代わりの作業を行う、ということの幅の広がりを今回非常に勉強させていただきました。今回の経験を活かして、今後もさまざまな生産現場に、アイデアを満載した設備をABBさんとともに作っていけたらな、という風に思っています」と締めくくっています。

ABBは今後もMES 甲信社と緊密に連携し、ジーテクト社、MES甲信社の両社からの期待にお応えしながら、次世代生産設備の実現に向けて引き続き貢献して参ります。

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