ABB日本ベーレーは国内大手電力会社である北海道電力株式会社砂川発電所の協力の下、遠隔保守支援システムを利用した実証事業を行いました。この実証事業では、ABBのリモートサービスが緊急時の対応の迅速化、発電所保安業務の省力化に貢献できることを確認しました。
経済産業省の補助事業者である一般社団法人環境共創イニシアチブ(SII)により国の補助金事業として採択されたこのプロジェクトは、IoT機器やデータの活用により発電所保安業務の省人化、プラント全体のパフォーマンス向上を目的としています。
パイロットプロジェクトの実施
今回の実証事業においてABB日本ベーレーは、最先端の遠隔保守支援ソリューションであるABB Ability™ Remote InsightsとABB Ability™ Augmented Field Procedures (AFP) を採用しました。
拡張現実 (AR) ツールであるABBのRemote Insightsは、現場担当者同士や当社のエンジニアをリアルタイムでつなぎ、音声やビデオを介した遠隔支援やトラブルシューティングを可能とします。これにより、組織内外の専門知識を十分に活用できるようになります。また、メンテナンス作業の記録がそのまま時系列に蓄積でき、同様の作業が発生した際に過去の作業担当者や作業内容をすぐに参照し活用できます。遠隔地にいるエンジニアの知見を現場作業員に提供することで、問題の早期解決に役立ち、お客さまのメンテナンス作業をより効率化、省力化します。お客さまは、当社のエンジニアが現場へ到着するのを待つことなく作業を開始することができ、コスト発生につながる可能性のある遅延を回避することができます。
AFPは紙の作業手順書をデジタル化できるシステムです。タブレット端末にインストールしたアプリからデジタル化した作業手順をインタラクティブに実行することができます。アプリ上で作業の進行状態をリアルタイムで管理し、各手順には画像や動画などを添付することも可能です。また、制御システムとの接続が可能で、プロセス値を自動で取得し、作業が適切に行われたかどうか判定します。AFPはABBの先進的な分散型制御システムABB Ability™ Symphony® Plus、ABB Ability™ System 800xAはもちろん、他社のシステムとシームレスに接続することができます。このように、AFPは現場作業者の経験をデジタル化し、安全性を高めるとともに、作業効率を向上させることができるソリューションです。
実際にこれらを使用した北海道電力株式会社砂川発電所保修課副長 (実証当時) の南貴幸様より、「北海道電力は経営環境の変化に対応すべく、現在、全社を挙げてDX(デジタルトランスフォーメンション)に取り組んでいます。今回試験を実施したリモート保守サービスは、トラブル発生時における迅速な復旧や対応時間の短縮によるコスト低減はもとより、発電所業務の効率化やヒューマンエラー防止、更には若年者への技術継承にも貢献できることからDXを推進していく上で非常に有効です」とのご評価をいただき、本ソリューションが実用レベルにあることを確認することができました。
「ABB日本べーレーが提供する遠隔保守支援システムは、発電所における旧来の保守作業をデジタル化し 、現場作業を効率化、省人化を実現します。今回のプロジェクトにより、長年お付き合いいただいている砂川発電所の品質と安全性の向上に貢献できることが確認できたことを大変喜ばしく思います」と、ABB日本ベーレー代表取締役社長の三浦哲雄は述べています。
さらに、「これまで当社は、主にプラントの制御を改善しプラント運用を効率化することで国内外のお客さまに貢献してきました。今回採用した新しい2つの製品は、お客さまの現場作業を支援するソリューションであり、これまでよりも直接的にお客さまが抱える課題にアプローチします。また、クラウドサービスやサブスクリプションラインセンス販売も取り入れ、お客さまにより導入いただきやすいサービス体系を整えました。当社の遠隔保守支援システムは、現場作業者にとってより役立つサービスとなると確信しています」と述べています。
この実証事業は、モノのインターネット(IoT)や人工知能(AI)などの新技術を用いて、産業インフラの安全性や効率性を向上させ、安全な事業の継続性を確保する「スマートセキュリティ」の産業界への普及を目指すものです。
電力の安定供給は電力会社にとって重要な使命であり、有事においても電力の早期復旧が求められます。リモート保守サービスは、そのニーズに応え、東京から1000Km離れている北海道であっても、地理的な問題を問わず有効にアプローチできる手段となることが確認できました。また、遠隔保守支援システムは新型コロナウィルスなどの感染症の流行下においても事業継続の一助となり、ニューノーマル時代のビジネスに付加価値を生むサービスです。
ABB日本ベーレーは、2021年3月に一般社団法人環境共創イニシアチブへ実証事業の最終報告書を提出しました。三浦は続けて次のように述べています。「このパイロットプロジェクトで得られた知識と経験を活かし、当社の遠隔保守サービスのポートフォリオやその他のABBデジタルポートフォリオの展開を通じて、お客さまのビジネスのデジタル化をサポートし、プラントパフォーマンスの継続的な向上に貢献していきたいと考えています」