「知識は力なり」と言われますが、スウェーデン南部にあるWaggeryd Cellパルプ工場では、最新のデジタルソリューションを賢く利用し、電力を大量に消費する操業についてより良い意思決定を行っています。その鍵となったのは、ABB Ability™コンディションモニタリングのサービスと、スマートセンサによるデジタルパワートレインエネルギーアプレイザル(= 評価・査定)の組み合わせです。これらから得られた深い知識と、工場のパルプ製造工程におけるエネルギー使用状況のマッピングにより、お客さまは全体的なエネルギー効率、そしてもちろんエネルギーコストに影響を与える様々な要素について、より良い情報を得た上で意思決定を行うことができるようになりました。
世界で最もエネルギー効率の高いパルプ工場の1つであるWaggeryd社にとって、省エネ技術をいち早く採用して成功を収めることは、目新しいことではありません。1989年の工場立ち上げ以来、エネルギーの高効率化は常にWaggeryd社の原理の中核をなしてきました。年間約19万トンの市況パルプを生産するこの工場には、現在450台以上のモータが設置されており、数年前にはパルプ業界で初めて高効率の同期リラクタンスモータを採用しました。現在、従業員1人当たりの年間生産量では世界で最も生産性の高いパルプ工場とされ、エネルギー効率の面でも同様に高い評価を得ています。
エネルギー効率の継続的な改善とコスト削減
過去数年間、この工場では、主要なプロセスアプリケーションを駆動する多くのモータとベアリングについて、エネルギー消費に関する継続的な洞察と深い知識およびリアルタイムの状態を提供することを目的とした、デジタルツールへの費用効果の高い投資を行うことを決定しています。
そこでWaggeryd社は、156個のスマートセンサで実現するABB Ability™コンディションモニタリングソリューションを導入し、同社のクリティカルライン全体をデジタル化することにしました。このセンサは、ABBおよび他社製のモータ、ポンプ、一般機械に簡単に外付けでき、消費電力、速度、振動周波数、表面温度を測定することができます。
この工場では、モータに93個、ベアリングに42個、ギアに10個、その他のプロセスポンプに11個のスマートセンサが取り付けられました。
これらのセンサは簡単にデータを収集し、ABB Ability™ コンディションモニタリングシステムに送信します。このシステムは、情報を分析し、機器の主要な運転パラメータを提供するとともに、例えば、ベアリングが高振動傾向にあり、故障の可能性がある場合など、発生し得るトラブルを早期に警告することができます。
さらに、状態監視サービスに提供されるABBのサービス専門知識により、機器の状態やさらなるメンテナンス推奨事項に関する詳細なレポートが作成されます。これにより、Waggeryd社は設置基盤の最適化について適切なタイミングで適切な判断を下し、全体的なエネルギー効率の向上において、さらなる利益を得ることができるようになりました。
デジタルパワートレインエネルギーアプレイザル、最適なエネルギー効率化ソリューションの最高峰
さらに重要な一歩として、状態監視で生成されたデータを活用し、ABBのサービスエキスパートが「デジタルパワートレインエネルギーアプレイザル」というエネルギー効率に関する詳細な新しいレポートを作成しました。その結果、Waggeryd社はさらなるエネルギー削減が可能な場所をピンポイントで特定することに成功しました。この的を絞ったデジタルエネルギーアプレイザルは、パワートレイン全体を見ることで、大幅なエネルギー削減が可能な場所を示唆しています。
「デジタルパワートレインエネルギーアプレイザルがどのように機能するかの一例として、Waggeryd社に提出されたレポートでは、エネルギーを浪費しているモータについて知ることができました。運転効率の悪いモータや、サイジングが適切でないために十分に活用されていない、つまり有効エネルギーと無効エネルギーの無駄遣いにつながっているモータを特定しました。この情報を有効に活用するための第一歩として、Waggeryd社は近い将来、上位10台のモータリストから6台のモータを更新し、有効エネルギーと無効エネルギーの両方を改善・節約することを決定しました」と、ABB モーションサービスのデジタルリードPeter Isbergは説明しています。
コネクテッドアセットで未来を切り開く
パワートレインの状態監視にABBのデジタルソリューションを採用することで、Waggeryd社はさらなる省エネを実現するための強力な方法を手に入れました。モータの性能を常に把握できるようになったことで、工場の管理者は、どのモータをどのような優先順位で交換すべきか、十分な情報を得た上でアプローチすることができるようになりました。さらに、信頼性と稼働率が向上することで、エネルギー効率と生産性がさらに向上し、製紙工場に販売する高品質なパルプを生産できるようになるという副次的なメリットもあります。
Waggeryd Cellの工場長Andreas Råvik氏は、この結果に明らかに満足しています。「ABBとの協働により、エネルギー効率を改善することができました。ABBのエネルギーレポートを活用することで、サイジングが正しくないモータや、効率の悪い古いモータなどのアセットを特定し、交換することができます。また、デジタル化の効果で、故障の前に潜在的なエラーを修正できるため、予定外の生産停止が少なくなりました。私たちにとって最も重要なことは、工場が年間を通して毎時間稼働し、予定外の停止がほとんどないことです。高い生産レベルを達成できたとき、私たちは真の意味でエネルギー効率に優れていると言えるでしょう」
Waggeryd CellでABBのデジタルソリューションがどのようにエネルギー効率の改善に活用されているか、以下のビデオで詳しくご紹介します。
パワートレイン用ABB Ability™コンディションモニタリングは、回転機器の性能と効率を最適化します。ドライブ(インバータ)、モータ、ポンプのすべてのパラメータについて透明性を実現し、コンプレッサ、コンベア、ミキサ、押出機のメインシャフトなどのアプリケーションにも適用することができます。