UPSの従来方式と新構造

UPSとは

UPS (Uninterruptible Power Supply、無停電電源装置) とは、瞬時電圧低下 (瞬低) や停電等に代表される電源のトラブルから重要機器の安定した運用を守るために使用される電源システムです。

UPSが守る機器は多岐に亘り、小型のサーバーから大規模データセンタまでを含んだIT負荷や、工場等で使用される製造装置と付帯設備で構成される産業負荷といった、計画外の停止が許容できない重要機器が対象となります。

UPSは主に電力変換用のコンバータ (整流器やインバータ) と、電力を蓄える蓄電媒体 (蓄電池、キャパシタ) との組み合わせで構成されます。

装置方式として複数種類存在しますが、いずれも電源トラブル発生時、蓄電媒体に蓄えた電力をインバータ経由で出力することで負荷の安定運用を担います。

従来方式

常時商用給電方式

UPS市場においては複数種類のUPS方式が使用されておりますが、その方式の殆どは低圧の電源ラインで使用するUPSにのみ適用され、高圧ラインにおけるUPS方式はその種類が限られます。

日本国内の市場において、高圧ラインに対しては一般的に静止型の常時商用給電方式UPSが使用されています。

常時商用給電方式は、UPSに供給される系統電圧が安定している間は負荷に対してこれをそのまま供給しますが、ひとたび入力電圧がUPSの許容範囲 (一般的に定格電圧の±10%) を逸脱すると、系統と負荷の間に直列に挿入されたスイッチが系統を遮断し、同時に蓄電媒体の電力をインバータ経由で放電することで出力電圧を安定化させるUPS方式です。


高圧6.6kV向けのUPSとして広く用いられている方式ですが、次のようなメリット、デメリットが挙げられます。

従来方式のメリットとデメリット

メリットデメリット 
 1. 比較的シンプルな装置構成   1. UPS放電時に電圧の乱れ (じょう乱) が生じる
 2. 高効率 >99% 2. UPS許容範囲内の電圧変動や電源ノイズに無防備
  3. スイッチの電流定格で装置容量が制限される

 

これらの特徴から、常時商用給電方式のUPSは産業負荷に対しては問題無く使用されますが、電圧の乱れやノイズを嫌うIT負荷、つまりデータセンタに対しては適用できず、また装置の容量も最大で6MVA程度に制限されてしまいます (半導体高速スイッチの場合)。一方で6.6kVという適用電圧について目を向けると、6.6kVは日本国内では広く用いられる電圧であるため問題にはなりませんが、海外ではより高い11kVや22kVが支配的なケースが見られ、高圧UPSの海外展開についてネックとなっていました。

 

ABBはこれらのデメリットを解消する、世界初の方式を用いた新しい高圧UPSを開発いたしました。

新構造

ZISC構造

従来式のUPSにおけるスイッチに代わってリアクトルを搭載したシステム構成がHiPerGuard MVUPSの特徴です。

このリアクトルによりインバータが系統側と分離されているUPS構成をZISC構造と呼称しております。

常時商用給電方式と比較して、一見すると小さな変更の様に思われますが、このZISC構造により非常に大きなメリットがもたらされます。

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