製薬および医療機器メーカーはプレッシャーにさらされており、業務の効率と品質を向上させ、コストを抑制し、研究開発時間を短縮して製品をより迅速に発売すると同時に、これらのタスクを遂行する熟練した専門家の世界的な不足に対処できる創造的なソリューションを必要としています 。自動化は、これらの課題を克服し、スタッフの安全性を向上させるのに役立ちます。ロボットは、現在の手動プロセスよりも最大50%速く反復的なタスクを完了することができ、生産性を向上させ、高度に熟練した製造、医療、研究所のスタッフがより価値のある活動を開始できるようにします。
正確で、迅速で、柔軟性があり、疲れを知らず、24時間体制で働くことができるロボットは、繰り返しの作業に適しているだけでなく、必要に応じて仕事を切り替えることができる柔軟性も備えています。最近の技術的進歩により、ロボットは、主に自動車産業用に設計された、大型でヘビーデューティという以前のコンセプトから遠く離れています。今日のロボットは、設置面積が小さく、柔軟性が高く、統合されたビジョンを備えており、衛生的で洗浄が容易なモデルがすべて揃っています。.
スカラロボット(SCARA: Selective Compliance Articulated Robot Arm)は良い例です。卓上に設置可能で設置面積が小さいスカラロボットは、医薬品製造施設で典型的な限られた設置スペースにうまく適合します。錠剤、試験管、または注射器を扱う場合でも、スカラロボットは高速かつ正確で、ピッキングと配置、ワーク搬送、ワークハンドリングなどの明確なPTP(Point to Point)動作を担います。
協働技術の発展は、ロボットが人と並んで安全かつ効率的に動作するための安全柵を必要としないため、研究室や医療施設にも適したロボットが増えていることを意味します。この協働により、人とロボットは、スピードと安全性を損なうことなく、最大限の柔軟性と効率性を発揮し、同じワークスペースを共有し、さらには同じ作業を協力して行うことができるようになります。
臨床検査および医療・ヘルスケアのアプリケーション
現代のロボットは、製造環境や物流センターだけでなく、製薬業界や大学での研究開発、医療施設での健康診断など、研究室環境における医療機器の構成要素として組み込まれることが増えています。今日のロボットは複数のタスクを実行でき、プログラミングが簡単で、他の実験装置を管理することもできます。
一般的な研究室の仕事に関して言えば、ABBの協働ロボットYuMi®は、投与、混合、分注作業、無菌機器のキッティングと遠心分離機への投入や取り出しなど、研究室の活動において反復的で繊細、かつ時間のかかる一連の作業を行うために装置に統合することができます。また、ロボットと統合された装置は、サンプルを正しい条件下で確実に培養するため、特別なオーブンへのサンプルのセットや取り出しを自動的に行うことで温度制御が必要なプロセスもサポートできるかもしれません。
YuMiは、現在の市場において、最も機敏とも言える協働ロボットですが、本質的な安全を追求した設計が施されています。パッドでカバーされたアーム、衝突検知、ピンチポイントの排除で、YuMiは、安全柵などの追加の安全対策を必要とせず、工場とは異なり、比較的に雑多とも言えるような環境でも、人間の同僚との間で安全に動作することができます。これにより、人間のような器用さが必要な場合や、すぐに変更される可能性がある場合でも、反復的で大量の作業を行うことができます。たとえば、YuMiは、デバイスの管理、収集と保管、サンプルの輸送、人間の研究室のスタッフと一緒にファイリングなどのプロセスタスクをサポートできます。
注目すべきアプリケーションの1つとして、ヨーロッパ腫瘍学研究所の研究者がYuMi®を統合し、スタッフがウイルス抗体の存在を定量化するために使用される免疫学的測定法(イムノアッセイ)の準備プロセスを管理できるようにしています。測定の準備には非常に時間がかかり、これまではウェルプレートの洗浄を含むいくつかの反復作業を行う必要がありましたが、YuMiが洗浄プロセスを引き継ぐことに成功しました。
一方、米国のCopan Diagnosticsは、組織、骨、無菌流体サンプルを管理するだけでなく、従来の綿棒や血液培養物を輸送するためにYuMiベースのHEPAフィルター付きバイオセーフティワークステーションを使用しています。技術者がバーコードをスキャンした後、ロボットはサンプル接種用のプレートと材料のシーケンスを自動的に提示します。その後、ロボットはプレートをストリーキングし、搬送プロセスを完了させるシステムに搬送します。
人間の手で触れない
実験室でのテストや製品開発から製造、そして梱包や出荷のための仕分けやピッキングに至るまで、生産工程全体での作業をロボットが引き継ぐ能力が拡大していることは、「人の手が触れない」という標語を現実のものにするのに役立つでしょう。
汚染事故とそれに続く製品リコールは、あらゆる企業の評判を損ねる可能性があります。厳格な法律において、医薬品や医療機器の偽造に対抗する手段としてトレーサビリティをとりわけ重要視しています。
自動化されたシステムは、ヒューマンエラー、偽造、改ざんの機会を最小限に抑えるための理想的な方法を提供します。例えば、統合ビジョンを搭載したロボットは、製品のすべての追跡データや取引データを含むバーコードのパッケージをスキャンすることができるようになりました。このデータにより、プラント管理システムは、製造工程内での偽造原料の使用や、汚染された製品が小売店や消費者に流通することを防ぐことができます。
労働環境における安全
安全性は、医療装置の製造ライン、実験室、および病院などのすべての医療環境において絶対的に重要です。有害物質やバイオハザード物質への曝露を最小限に抑えるために、反復的な作業や激しい作業をロボットが引き継ぐことで、従業員の安全性を向上させることができます。
例えば、デンマークの大手酵素メーカーは、Feige GmbH社のRobotFillersを2台使用して製品をドラム缶に充填しています。酵素からの蒸気は作業者に影響を与える可能性があり、また、充填作業を行うためのスペースが狭く、従来技術を導入することができませんでした。しかし、充填工程はすべて自動化され、小さな設置面積や作業スペースに制限する必要がありました。
各充填ユニットの中心的なコンポーネントは、180 kgの可搬重量を持つ4軸ロボットABB IRB 660です。RobotFillerは、パレットが動作位置に来るとすぐにパレットの上部から作業を開始します。IRB 660は、ビジョンシステムにより各ドラムの栓穴の位置を計算します。その後、パレットの高さを設定し、充填バルブを使用して各コンテナを充填します。充填が完了すると、IRB 660は充填バルブをねじユニットに交換し、金属製のシーリングキャップで締めます。
パッケージングの目
ビジョンシステムは、医薬品の製造や包装の他分野におけるロボット活用も拡大しています。その一例として、米国の製薬会社は最近、2台のABB IRB 340ロボットを中心に構築されたFlexa Cartoningマシンの特別バージョンを導入しました。 イタリアのIndustria Macchine Automaticheによって設計および設置されたセルは、Cognexビジョンハードウェアに基づくビジョンテクノロジーによって、整列していないワーク(スポイト)をコンベアからピックします。セルは、お客さまの目標速度である毎分150個を簡単に超えられます。また、ピッキングヘッドを交換して同様別種のワークを扱うこともできます。
電子商取引の成長に伴い、自動化ソリューションは製薬業界のコスト効率の高い物流を可能にしつつあります。スウェーデン最大のオンライン薬局Apoteaは、毎週17万個以上のパッケージを顧客に届けていますが、1日35,000個の荷物を指定されたケージに仕分けする汎用ロボットIRB 4600を3台導入して以来、生産性が30%向上しました。
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ABBの移動式自律型ロボット「YuMi」のコンセプト 食品・飲料の研究室でともに働くABBのロボットと技術者 ABBは、研究室や病院向けの協働ロボットソリューションを開発しています ABBは、研究室や病院向けの協働ロボットソリューションを開発しています スウェーデン最大のオンライン薬局ApoteaでABBのIRB 4600ロボットがピッキングを自動化 スウェーデンのTiki Safetyでフェイスマスクを生産するABB IRB 2600ロボット
次なる一歩
弊社の社内調査によると、世界市場は2025年までに60,000台近くの非外科医療用ロボットに達すると予測されており、2018年に比べて4倍に増加しています。 2019年10月、ABBは米国のテキサス医療センター(TMC)に新しい研究センターを開設し、学術、科学、医学の分野で最高の頭脳を持つ人々と協力して、病院や医療施設、研究所、製薬業界、医療機器メーカー向けの新しいロボットや自動化のコンセプトを前進させました。TMCは、年間1,000万人の患者を治療する世界最大の医療拠点であり、ライフサイエンスイノベーションの最前線にあります。
ABBのコンシューマー・セグメント&サービス・ロボティクス・マネージングディレクター、マーク・セグラは述べています。
「衛生的なデザインのロボットが増えてきており、さまざまな作業を処理できるようになったことで、ロボットによる自動化は、すでに医療、製薬業界の生産、試験、研究開発をより効率的かつ生産的にしています。ヒューストンのヘルスケア研究センターのABBチームは、新しいアプリケーションを研究し、パートナーとの新しい最先端ロボティクス・ソリューションの開発を支援しています」と述べました。「我々の目的は、人手で行う必要のある作業を減らし、検査業務のコストと精度を向上させることで、患者となる人々の満足度を高め、それが安全性の向上に帰結することを目的としています」
ヘルスケア・リサーチ・ハブ開設以来、ABBが展示してきたプロトタイプ技術には、遠心分離機への出し入れおよび試験管ハンドリングシステムを支援できるYuMiロボット、ピペッティングの用途で液体移送を実行できるIRB 1200ロボットなどが含まれています。
ABBヘルスケアロボットのために開発中のもう一つのプロトタイプコンセプトは、“移動できる”双腕ロボット、モバイルYuMiです。病院内での実験室や運搬する業務に関して、医療や実験室のスタッフを支援するように設計されており、ある場所から別の場所への異なるルートを発見、学習しながら、自律的に人間の同僚を感知してナビゲートを行う可能性を秘めています。薬の調剤、医療機器の積み下ろし、液体のピペッティングや取り扱い、試験管のピックアップや仕分けなど、反復的で時間のかかる作業を幅広くこなせる可能性を有しています。.
モバイルYuMiはまた、医薬品の調剤、病院で必要とされる場所にそれらを運び、病院のスタッフに医療用品を渡したり、直接患者の寝室にベッドリネンを運んできたり、幅広い物流の役割のために病院で使用されるべく開発されています。
すべてのプロトタイプ活動は、コストを最小限に抑えながら、処理能力と品質を向上させる柔軟性と継続的運用の水準を一貫した生産力と結びつけることによって、ロボット自動化が支援できる可能性のある一般的な医療実験室業務に対する将来技術に焦点を当てています。プロトタイプとしては医療機器ではなく、現時点ではまだ販売は行なっていません。
YuMiおよびその他のABBロボットコンポーネントは医療・ヘルスケア分野の用途に幅広い可能性を秘めていますが、各医療機器は、製品化される前に、その機器がそれぞれ固有の医療用途に対して、意図した通りに安全に実行できるかどうかを評価するために、堅牢な設計とテストプロセスを経る必要があります。適用されるすべての法律、基準、ガイドラインに準拠することは、各医療機器メーカーに帰属する責任です。
ABB(ABBN: SIX Swiss Ex)は、より生産的で持続可能な未来の実現に向けて社会と産業の変革に活力を与える、世界をリードするテクノロジー企業です。ソフトウェアをエレクトリフィケーション、ロボット、オートメーション、モーションのポートフォリオに結びつけることで、ABBはテクノロジーの限界を押し広げ、パフォーマンスを新たなレベルに引き上げます。130年以上にわたる卓越した歴史を持つABBの成功は、100カ国以上、110,000人の才気あふれる従業員によって支えられています。 www.abb.com
ABB ロボティクス&ディスクリート・オートメーションは、ロボティクス、マシンオートメーション、デジタルサービスのパイオニアであり、自動車からエレクトロニクス、物流まで、多様な産業に革新的なソリューションを提供しています。 世界有数のロボットおよびマシンオートメーションサプライヤとして、これまでに40万台以上のロボットソリューションを出荷してきました。私たちは、あらゆる規模のお客さまの生産性、柔軟性の向上とシンプル化によって、生産物の品質改善を支援しています。私たちは、コネクテッドかつ協働的な未来の工場への移行をサポートします。ABB ロボティクス&ディスクリート・オートメーションは、53カ国以上の100以上の拠点にて10,000人以上の従業員を擁しています。 www.abb.com/robotics